残雪から新芽、新緑の火山に囲まれた支笏湖へ
![]() 5月頭、まだ、風不死岳(ふっぷしだけ)と樽前山(たるまえざん)には雪が残っている。この1カ月で、あっと言う間に雪は解け、木々は緑になり、樽前山の火口付近はむき出しの溶岩が現れる。雨を呼ぶ支笏湖(しこつこ)の、美しい変化の季節だ。この時期の支笏湖の変化を、東京や大阪の友人に見せたい。 |
| 「海のワインだ、月浦は。そうだよ、畑はすぐ海の近くじゃないか」友人のソムリエが、わりと驚いたような声で言った。 「食べてみて、噴火湾のボタン海老と月浦があうから」と興奮気味だ。 支笏湖を見下ろすダイニングを借りて、特別のメニューを食べさせてもらっていた。月浦をグラスに注いで、最初の花のような香りの強さに驚いていた。飲み込んだときの酒としての完成度の高さ、素直さを味わう。個性が強くて繊細なワインだ。 ボタン海老のフリットがテーブルに運ばれた。カリッとした衣と絶妙な塩味。付け合わせの春野菜「うるい」の苦み。小さなトマトは湯剥きしてある。甘い。 普段生で食べることの多いボタン海老が、ふわっと揚がっている。この海老特有の甘味と、揚げた香りが開いている。生より旨く感じる。そこに月浦を飲んだとき、目を丸くして隣と向き合った。海老の味がさらに引き出されて、海の香りさえした。ワインの花の香りは治まり、別のさわやかな余韻が喉から鼻に抜けてゆく。洞爺湖を見下ろす畑の風景が浮かぶ。 月浦は今まで、品格のある旨いワインだと思って飲んでいた。とうとう、このワインの飲み方がわかったというか、地元の海産物と合わせたときの底力を思い知った。 (2009年5月1日・杉山幹夫) シェフはフラノ寶亭留の半田明久さん。このディナーを作りに、遠い富良野から野菜をもってきてくれた。爽やかで、優しい印象。どの料理も行き届いている。素材毎に選ばれた塩、最低限の火の通り。「強い味を付けて旨いと言わせるのは簡単なのかもしれないが、この人の料理には料理として提供できるぎりぎりの味の弱さがある」とソムリエはいう。
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![]() 洞爺湖のほとりで作られる月浦ワイン。 この夜、世界中のワインを何種類も、たくさんのグラスを並べて飲んだ。そのなかで、一番の取り合わせは、月浦とボタン海老だった。洞爺湖は有珠山をはさんで噴火湾のすぐ近く。夏にホタテなどをあわせるのが楽しみだ。 ![]() 野菜の下に隠れている噴火湾産のボタン海老のフリット。月浦を合わせたとき、思わず立ち上がりそうになった。 ![]() 富良野産の甘い、香りのよい越冬キャベツと人参にアスパラやブロッコリーなどの春の野菜とサクラマスのテリーヌ。ガラス細工のような輝き、冷たく甘い食感にふらのワインのミュラーが合う。
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