北海道の温泉は冬がいい
温泉は冬がもっとも似合う。特に「雪」という天からの贈り物を授けられた北海道の温泉は、断然、冬がいい。息をとめて露天風呂へのドアを開ける。湯けむりで前がよく見えない。寒い、寒い。一瞬で全身の毛が逆立ち、鳥肌が立つ。何より足の裏が冷たくて、思わずつま先立ちで走り出す。さあ、お湯だ。かじかんだ手足をそろそろと湯につける。冷えた体をそっと沈める。じん、じん。そこで初めてあたりを見渡す。周りは雪の壁。空からも雪。じん、じん。人心地ついた顔を冷たい雪がなでていく。上を向いて口をあけ、雪を食べる。じん、じん。「ああ、日本人でよかった」と思う瞬間。
私はとりわけやわらかでいいにおいのする透明な温泉が好きである。札幌から少し離れてしまうが、ニセコの新見温泉や登別のカルルス温泉、糠平の糠平温泉がお気に入りだ。首までつかりながら、手でお湯をすくってにおいをかぐ。かすかな硫黄臭を含んだちょっと焦げたようなあのにおい。ひそかに「地球のにおい」と呼んでいる。そのにおいの温泉に出会ったら、名残惜しくて、いつまでも入っていたいと思う。だから私は雪を楽しみに待つ。雪が降ると、体中が「温泉、オンセン」と騒ぎ立てる。「地球のにおい」の思い出が脳みそのどこかを刺激する。よし、週末はニセコの新見温泉へ行こう。
鼻めがけて、お湯をビチャリ。ああ、いいにおい。じん、じん。雪をすくって火照った顔にピチャリ。冷たくなったほっぺに、またお湯をビチャリ。じん、じん。ああ、いい気持ち。しんしんと雪が降る露天風呂で、ビチャリとピチャリが延々と続いていく。あ、でも髪の毛が凍ってきたみたい。もういい加減、出なくちゃ。
(2009年1月1日・M.S.)
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