透明な、あくまでも透明な水
支笏(しこつ)湖と、そこから流れ出る千歳川でカヌーに乗れると聞いて出かけた。 支笏湖は千歳市にある。札幌都心から山道を車で約1時間20分、新千歳空港からはほぼ直線の森の中の道を約40分ほどだ。火山の噴火でできたカルデラ湖。豊かな森に囲まれた静かな湖だ。日本で2番目に深く、2番目に透明度が高い。千歳市蘭越(らんこし)で「バイエルンの風カヌー学校」を営む鳥畑博嗣さんに案内してもらう。バイエルンの名は、自身が5年間滞在してカヌーを学び、ドイツカヌー連盟からコーチの資格を取得したことにちなむ。鳥畑さんは95年の世界選手権の日本チーム監督、96年のアトランタオリンピックで日本チームのコーチングスタッフを務めた。
湖畔のモーラップキャンプ場近くで待ち合わせ。さっそく水辺に案内される。実際のカヌーや、ライフジャケットを目の前にして、カヌー初体験の筆者の緊張が高まる。カヌーの特性や乗り方など、簡単な説明を受け、早速乗ってみる。操舵は鳥畑さんにお任せだ。一こぎして、すーっと湖の上に滑り出る。水面が近い。パドルが水の中ではっきり見える。のぞけばどこまでも見通せそうな水。いやな匂いも全くない。透明な水の上に浮かびながら、静かに進んでいく心地よさ。遠くには恵庭岳や風不死(ふっぷし)岳の威容が浮かび、その懐に抱かれるようにある最大水深約360メートルの水の上。頬にあたる冷たい風、水をかく音。いったい私はどこにいるのか。
湖の上での体験を終え、場所を移す。車にカヌーを乗せ、千歳川に向う。一年を通して水量や水温が安定し、流れも緩やかで、カヌーに向いた川だという。流れの緩やかなところから、カヌーを川に入れる。鳥畑さんがしっかりとカヌーを安定させてくれるので、乗り込むときも安心だ。鳥畑さんのコントロールで川にこぎ出す。緑に囲まれた川の中、風を切って進む。カヌーはぐんぐんと進む。「流れに乗る」という言葉を実感する。
川はゆるやかに蛇行を繰り返す。岸辺からせり出した樹々の枝が水面にかかる。小さな中州や、低く垂れ下がる枝をたくみによけて行く。ハンドルがついた車のように、カヌーは鳥畑さんのパドル一本に忠実に反応する。安心して乗っているので、周囲の景色を存分に楽しめる。水は川底まで透明だ。鮮やかな緑色のバイカモ(梅花藻)が流れに身を任せて揺れている。さらさらと流れる水の音。岸からはウグイスの鳴き声が聞こえる。清流によく見られるヒガシカワトンボが飛んでいる。
こんなに美しい自然の中に身を置ける幸せ。秋が近くなると、千歳川を遡上するサケがカヌーの横を通ることもあるそうだ。見てみたい。
「沈」について
カヌーがひっくり返ることが「沈(ちん)」。いつでもそうなる可能性はある。いざというときあわてないため、「沈」を体験させてもらった。あっという間に水の中へ。頭まで水につかり空が水の上に見えた。しっかりとライフジャケットをつけているので、不安はない。
畑さんの指示に従いカヌーの縁につかまりながら岸へ。カヌーはあっという間に元に戻っており、パドルもちゃんと回収されていた。その手際のよさ。もちろん体はびしょぬれだが、水がきれいなためか匂いもまったくなく、お風呂に入ったような気持ちよさが残った。天気がよければまた沈んでもいい、とこの川は思わせる。
(2005年7月29日・記 吉村卓也)
バイエルンの風カヌー学校
- 住所
- 〒066-0068
北海道千歳市蘭越58-13 - 問い合わせ
- 電話 0123-26-2901
- 公式サイト
- http://chitosegawa.web.fc2.com/
- 内容
- カヌーの講習、体験、観光などすべて約2時間のプログラムで講習は大人10,500円、小学生5,250円、体験は大人5, 250円など。
希望に応じてプログラムを組めるので、詳しくは問い合わせを。
















