| 夏。うだるような暑さの中「さわやかな北海道へ脱出しよう!」と誘われれば、誰もが十中八九「行きたい!」と答えるだろう。時間とお金さえあれば。神奈川に住んでいた私もそうだった。ただお目当てが別にある。キャンプ場だ。 結婚して子供ができてからは、夏休みにキャンプが欠かせない。日程の許す限りよく出かけたものだ。だからキャンプ場情報誌もよく読んだ。そのなかで、必ず手が止まるページがある。写真の色がそこだけひときわ鮮やかなのだ。「北海道のキャンプ場」。 ため息がでるほど美しい。同じ日本とは思えない。芝生の緑も設備も完璧なのだ。海辺のキャンプ場にまで芝生が敷き詰められている。そもそもこんなきれいな芝生にテントを張ることが許されていいのだろうかと思う。ごみごみしている首都圏のそれとはあまりにちがいすぎる。水場やトイレも清潔で十分に整備されている。テントスペースも広い。いいなあ。うらやましい。写真から吹いてくる清涼な風と開放感にしばしうっとりするのだ。 そんな我が家がなんと札幌に引っ越すこととなった。私の脳裏にはもちろんあの芝生のキャンプ場が。夢だったはずの憧れが実現可能になる。いや、憧れていたからこそ夢を引き付けたんだ、きっと。そう思った。 札幌の住宅街は自然に恵まれたところが多く、私たちもその中でお気に入りの家を見つけた。 庭の芝生に犬と寝転ぶ子供たち。念願のウッドデッキを作って、休日のブランチやバーベキューをそよ風と一緒に楽しんだ。庭にテントを張って模擬キャンプ。寝袋を用意すると子供たちはおおはしゃぎだ。 近くの緑地公園のはっとするほどの美しさはどう表現すればよいのだろう。その遊歩道を毎日犬と散策する贅沢。小鳥のさえずり。木陰でお昼寝。無料のパークゴルフ場やテニスコートで遊ぶ。近隣の緑地で山菜採り。湿度のない空気がひんやりと心地よい。のびのびと空に広がる樹々。絨毯のような芝生。どこへ行っても緑が輝いている。― 完璧だ。 あんなに恋焦がれていた思いがなんのことはない、札幌の自宅から半径1キロ以内の生活圏であっけなく満たされてしまった。渋滞にもめげずキャンプへ情熱を傾けていた私たちがこのキャンプ天国の北海道にいるというのに、薄情にもその気が失せるなんて神奈川の友人が聞いたらびっくりするだろう。私はにんまりして答えよう。「だって毎日がキャンプなのよ。」 (2003年6月1日・古市典子) |
![]() オートリゾート滝野のフリーテントサイト |














