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| 羅臼の時不知(トキシラズ)。この時期の鮭。卵をだいていないから、身に旨味が凝縮している。 |
| 友人を昼飯にさそった。ここ一番、事業で頑張って欲しかったので、奮発して「すし善」の本店。 札幌で食べる寿司。職人の数も、腕も、そしてネタも、最高の寿司の街だ。 円山に構えるすし善の本店のカウンター。この時期、夜は予約がいっぱいで、地元の人間でもありつくのが大変だ。
まずは、積丹の平目の昆布締め。酢橘の絞り具合がいい。寿司がふっくらしていて喉越しがいい。別格だ。旨い、やっぱりすし善は本店で食べたい。つれは「おれ、昆布締めすきなんだ」と。水分が抜けて昆布とヒラメのうまみと硬めのゼリーのような独特の歯ごたえで、10貫のランチコースが始まる。 鮪の赤身。丁寧に包丁が入り、厚み、角がいろいろに演出される。江戸前の甘いたれが味を引き立てる。漬けを食べたような整った味。 平目の縁側。なんともいえない香ばしさと歯ごたえ。大きな積丹の平目のしっかりした縁側はこの時期、六月中旬から七月中旬のものだ。日本は梅雨の季節、札幌は爽やかな日が続く。同時に、夏の魚に移行した日本海は、寿司ネタの最高の時期を迎えるという。水温が低いままの夏の初めがいいのだという。 積丹の甘海老。札幌に生まれ育っても、こんなにでかいのは初めてだ。いや、子どものころなら食べたことがあるか。とにかく、小ぶりの牡丹海老かと思った。しかし、食感はのど越しのいい、旨みの強い甘海老だ。ほんとうに甘い。 紋別の細魚。多めに絞られた酢橘がオホーツクから来たばかり細魚をさわやかにしあげている。 ワサビを目の前でサメ肌でおろしてくれている。この香りがいい。寿司を香ばしくしている。静岡の契約農家から確実に入るそうだ。 もちろん道内産のイクラ。寿司の上からあふれている。 羅臼の時不知。この時期の鮭。卵をだいていないから、身に旨味が凝縮している。入ったとたん口の中でふわっと消える。甘味、旨味、歯触りに北海道で取れるヤマワサビが妙をつくる。正直、こんなに旨い時不知を食べたことが無い。ここまでの旨味は初めてだ。 野菜サラダ。なんだか、身体が熱くなるほど旨い。そこに冷たいサラダ。ひと味違う。野菜が一つ一つ生き返っていて、今畑からもいだような状態にある。レタスの堅さ。胡瓜の瑞々しさに種はとってある歯ごたえ。これが煮物でも食べるように一口ごとに一つの野菜を楽しんで食べる。大きさが絶妙。冷たい。旨い。 野付の帆立。まったくしゃりが見えない。体格のいいつれも、自分も、もう腹いっぱいだと思っているぐらいだった。こんな大きな帆立の寿司は初めてだ。ところが、甘い。包丁のたてた角が心地よく舌に当たる。あっという間に消えた。 留萌の蛸。やわらかく煮ている。信じられないくらい柔らかい。どうすればこんなにやわらかくなるのだろう。口の中で香ばしくしゃりと混ざる。 卵。卵を産み始めたばかりの鶏の卵だけをつかい、出汁の変わりに牛乳。醤油の香りをきかせた。弾力、旨味、喉越しが忘れられない。 味噌椀。岩海苔が鰹の濃い出汁とよびあって香りと旨味がつよい味噌汁。なんか目をつぶって、ゆっくり飲んでしまう。味噌汁を終えると、寿司は終わり。いつもなら、何か余計に頼むところだが、満足仕切っていた。鮑や海胆を追加しようにも、腹がいっぱいだ。 デザートは小豆のシャーベット。十勝の小豆のシャーベットに栗がのっている。濃厚な緑茶と合う。客はこのシャーベットか杏仁豆腐のどちらかを選ぶ。 店長の大金さんは、「職人として最初の10年は、自分の握りの技術を鍛えるだけで精一杯でした。自分の仕事ばかりを気にしていたんですね」。その積み重ねの中から、ふと生まれて来たのが、素材を研究する目だったという。鶏を飼う農家との学び合いの中で出来上がる卵焼き。休みの日には港までいってしまう。漁師たちと語らい、魚の勉強は止まらない。「何時も仕事のことしか考えていないですね。なんでですかね。でも、社長の嶋宮も四六時中仕事のことしか考えていませんね」。優しい笑顔の店長は、社長の話をするときは更に嬉しそうだ。仕事にはかなり厳しいという社長の握る寿司は、ふっくらとしたいい握りでいまでも理想とする寿司なのだそうだ。 あらためて、寿司は職人の技のたまもので、同じ材料でもまったく味、品格の違うことがわかった。同時に、接客しながら、全ての寿司のタイミングをはかる余裕と配慮に涙が出た。 友人はえらい元気になって駆け出すように仕事に向った。
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![]() カウンターに座ると、箸の横に鮮やかな白群の青が目に飛び込む。晒し木綿を「夏の色」に染めた州浜紋の膝掛け。これは記念にもって帰っていいという。季節ごとの色の違いが愉しみだ。 ![]() ビールを頼むと、備前のマグ。通しは飲まないつれにも出してくれる心配り。 ![]() 平目の縁側。
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