豊平川源流部のイワナ
国道脇から、オフロードバイクを押してやっと通れる隙間から林道へ抜ける。林道を下ると20分ほどで川が現れる。地形図で調べておいた場所でバイクを止める。地形が険しいため、林道から川縁へ出られるルートはそう多くはないのだ。エンジンを止めるとあっという間に自然の静けさに包まれた。
シーズン初の入渓時はいつもわくわくする。ひんやりとした空気、ウェーダー(胴長)越しの水圧、水温、せせらぎの音、きらめく水面、眠気と適度な高揚感、緊張感。そして少年に戻る。ザブザブと上流へと釣り上がっていく。川を曲がるたびに美しい渓相がつぎつぎと現れ、思わず釣りを忘れそうになる。竿を出すポイントは「淵」と「瀬」。岩や倒木や湾曲のため、複雑な流れや穏やかな流れになっている場所だ。人生と同じで、まっすぐな場所は面白くない。今日はどんな魚が相手をしてくれるだろうか。
美しい渓相のなか、イワナ3匹が、しばしの間私のルアーと戯れて、元気に豊平川に戻っていった。竿をたたみ、ゴロンとした川床の石を踏みしめながら、もと来た道をまたザブザブ歩いて戻っていく。ほどよい疲労感と達成感。気が付けば6時間の川歩き。太陽はすでに真上だ。
陸に上がり、ウェーダーを脱ぐと汗びっしょり、そして腹ぺこだ。帰り支度をすませ、自然の静けさをバイクのエンジン音が切り裂いたとき、夢のような少年の時間は終わる。しかし、林道をバイクで駆け上がり、最後にバイクをぐいぐい押して国道に出るとさすがにほっとする。汗びっしょりの服は、札幌の爽やかな風がバイクの上で乾かしてくれた。
体力と技術と装備が要求されるため、全ての人にはお勧めできない遊び。ここは公園ではなく自然の中なのだ。危険は自ら管理する。それこそが楽しみであり自由でもある。危険と自由、自然と都市、少年と大人、それぞれの抜群の時空間的距離。札幌は懐が深い。
(2008年8月8日・平野繁樹)
















